【本】仮想儀礼 上下

 2009-05-31
篠田節子 (新潮社)
★★★☆☆

人生に失敗した二人の男が、ビジネスとしての宗教を立ち上げた。
信者が三十人いれば、食っていける。五百人いれば、ベンツに乗れる― そんな軽〜い気持ちでネットから始めたその宗教に、のっけからヘビーなお客(?)が次々と現れる。

確かに宗教は簡単に始められる商売かもしれない。
そして今の世の中、ニーズは決して少なくないだろう。
ちょっとツボ(壺ではない)に填ればあっという間に大きくなることも可能だろう。
だがその需要の大きさと多様さゆえ、扱いを間違えると思ってもみない展開になっていく。

やってくるお客、やってくるお客、皆、どこかに居そうな人達である。
昔なら小説の中でしか存在しないと思われていたような境遇も、今ではどこにあっても不思議でないので虚構感が薄い。
その重い境遇と悩みを軽い気持ちで受け入れていったら、どんなしっぺ返しに合うか。
宗教は生半可な覚悟でやってはいけない。

というのはかなりリアルに、ありそうな展開で描かれているのだが…。
本当に「ありそう」な展開、どこかで見たような展開が続いていくのが途中からどうも鼻について困った。
ドキュメンタリーでも読んでいるような既視感ゆえ、完全なフィクションな気がしない。
いったい作者は誰の目線で誰の側から書きたかったんだろう?

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【映】鈍獣

 2009-05-17
細野ひで晃 監督
★★☆☆☆

浅野忠信、北村一輝という濃ゆ〜い面子に惹かれて見に行ったわけだが。
クドカンという人はどうも良く判らない。
意味不明なものを書くと、徹底的に意味不明…かと思いきや、とんでもなく中途半端だったりするので油断がならない。

殺<ポロ>しても殺<ポロ>しても戻ってくる凸やんは、忘れたくても決して忘れることの許されない、忘れる根性がないのにやってしまった彼ら自身が呼び戻した悪夢。
そもそもポロすという時点でもうダメダメじゃん、江田っち。
浅野のアルカイックスマイルがどこまでも怖い。

が… 何が悪いのか判らないがノリが悪いんだよね。
スピード感かなぁ。
キャラとしてでなく、ストーリーとして真木よう子が出てくるとガクっとなる。
もっとなんかこう、畳み掛けるように展開して欲しかったのかも。

過去話に子役を使わないでアニメにした点とか、疲れ切ってどんどん“普通”な感じになっていく北村一輝とか、前時代的色気な南野陽子とか、良いところはすごくあるんだけれど、ジェロと芝田山親方が何のために出てくるのか判らないみたいな中途半端さがやっぱり惜しい。

もともと舞台だったそうで、これは確かに舞台向きかも。
映画にするなら、もう少しきっちりと「オチ」が欲しかった。

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【本】雨の罠

 2009-05-10
バリー・アイスラー著 池田 真紀子訳 (ヴィレッジブックス)
★★★☆☆

『雨の牙』『雨の影』に続く、日米ハーフの殺し屋ジョン・レイン シリーズ第3弾。
映画『レインフォール/雨の牙』を観たので図書館で探したら、即借りできたのはこれだけだった。

大物武器商人を自然死に見せかけて殺害のはずが、一人の美女の存在で予定外の展開に。

映画のキャラは、役者も含めてそんなに原作を壊していなかったのかな、と思った。
どこに行くにしても、常に戦闘者の目でセキュリティチェックを欠かさない細かい描写が、レインの性格と行動を良く現わし、それが臨場感をより高めている。
誰も信じず、昔からの戦友すら疑うのが前提なレインだが、『雨の牙』のみどりに関してだけは、この作品の中でも特別の想いを引きずっているというのがありあり。
映画ではさらっとしか描かれなかったみどりとの関わりがどんなものだったのか、『雨の牙』の方がますます気になる。

作者が元CIAとのことで、細部に渡っていちいち描写がリアルで、本国での人気も納得できるところなのだが、ド素人な読者としては、諜報機関にしてもマフィアにしても武器商人にしても、物語の中の組織的知識しかない悲しさ、ラスト近くで全ての種明かしが始まると専門用語でくらくらして、ストーリーに乗り切れないのがいささか難。

訳者あとがきによれば、前作二作は基本的に日本が舞台だった様なので、日本での生活経験もある作者がどんな“日本”を描き出しているのか楽しみなところである。

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【T】しゃばけ

 2009-05-05
永田優子 脚本 (TVドラマDVD)
★★★★☆

畠中恵原作「しゃばけ」シリーズのドラマ化第一弾。
ジャニーズの手越が主役という、数字さえ取れれば感覚のドラマかと思えば、なかなかどうして出来が良かった。

原作を壊してないし、CGもそんなに違和感ないし、何より若旦那がハマってる。
いささか顔色良過ぎでキビキビ歩き過ぎとは思うけれど、優男だけど病弱で、でも意志は結構強くて頭が良い、という役所を、良い感じで演じてたかと。

ストーリーも割と原作忠実で、変えてるところもわざとらしくない。
短編でしか語られない小さなエピソードをさり気なく織り交ぜたりして、原作ファンへのサービスも忘れないところも心憎いかと。
全体にやたら抹香臭いのも、原作どおりだしなぁ(苦笑)

手代の二人が妙に歳行き過ぎなのと、屏風のぞきが良い役もらい過ぎ!てのがちょっと気になったけれど、テレビドラマとしては相当力入ってたと思う。

満足でした。

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【映】鴨川ホルモー

 2009-05-05
本木克英 監督
★★★☆☆

ほぼ原作どおり、よくぞ映像化しました、という感じ。
当初、何のサークルなのか判らないまま、戸惑いながらも流されていく感じとか、時が満ちて唐突にそれがリアルに体現される瞬間とか、原作同様の不思議さが体感できる作りになってるんじゃないかと、原作を既読で観た者の感想。

配役も素晴らしい。
主人公なのに、実は一番風采が上がらず情けない感じの安部こと山田孝之。
最初は一番情けないヤツ…みたいに見えるのに、完全に主役を食った感のある高村こと濱田岳。
とことんつっけんどんで、でもさり気ない気づかいと非凡さを随所に現す凡ちゃんこと栗山千明。
ひょうひようさ加減がたまらないスガ氏こと荒川良々。
イケメンなんだけど、時々仁王さんみたいな形相になる芦屋こと石田卓也。
いやまぁ、よくもこんなピッタリな役者さん連れてきましたね。

で、全体の作りとしては原作忠実だし配役は良いしで大満足…になりそうなもんなのに、ラストの展開を大きく変えちゃったのが残念な結果かも。
京都の名所案内にすべく場外乱闘ドタバタにしちゃったおかげで、凡ちゃんの非凡さ、大胆さ、素晴らしい戦略のほとんどが消し飛んでしまってる。
あれがラストの肝だったのになぁ、というのが一番残念。

それにしても、栗山千明の所作はいちいち美しい。
並んだ工具の上をついーっと滑る指先とドライバーを操る角度に惚れました。
意外なところに出てくる鶴光も、あまりに違和感なくて笑える。あんな設定、原作には無いんだけどねぇ。
あと、一番変なのが高村の相部屋の“一般人”!
どうして君らはそんなに意味不明なもんに何の疑いも持たないかのように付き合ってるの?!
原作にもそんな人居なかったよ!京大生って、素でそういうもんなの?! うっかり勘違いしちゃうよ?

とにかく、ラスト、戦術家の凡ちゃんが描かれきれてなかったので星3つ。

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