【本】プリンセス・トヨトミ

 2009-03-29
万城目 学 (文藝春秋)
★★★★☆

京都(ホルモー)、奈良(鹿男)、ときて、今度は大阪である。
東京からやってくるのは会計検査院という、三権分立の外側にいる人達。
外見も内面もいささか規格から外れたデコボコトリオが、うっかり大阪の実態を掘り起こしてしまう。

前二作が、最初からいかにも虚構、これはファンタジーです…が前面に出ていたので、今回は雰囲気の違いにちょっと戸惑ってしまったのだが、後半の盛り上がりはやっぱり万城目氏の真骨頂だった。
“彼”はなぜ“彼女”でなければいけなかったのか…それも最後の最後で納得がいく。

昔から、地域モノの物語を読むたびに、何か言いしれぬ寂しさを感じることが多かった。
それは、“この”地域の人達が羨ましい、という感情。
今回も、大阪の人達が羨ましかった。この土地に生まれ育っていたら、どんなにかわくわくできただろうと思ってしまった。
でも、もしかすると、自分が生まれ育ったあの町にも、何かがあったのかもしれない。
否、今でも何かがあるのかもしれない。
物語は自分で探さなければ向こうからはやってこない。
自分で作らなければ気付くことなんかできない。
語られないところに、実は大きな何かがあるのだろう。
いつか、それを見つけることができるかもしれない。
彼等のように、戻っていけると良いなと思った。

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【映】旭山動物園物語 ペンギンが空をとぶ

 2009-03-01
マキノ雅彦 監督
★★☆☆☆☆

旭山動物園は、ぼちぼちプロモーションドラマを作るのを止めても良いんじゃないかと思う。
内容的には、幾度となくドキュメンタリーで、ドラマで語られた「本当にあったお話です」となんら変わらない。
“本当にあった”トピックス的出来事はそんなに無尽蔵であるハズもなく、山盛りあった特集企画のどれかで既に語られている話ばかりである。
差別化を図るとしたら、誰の目線で描くか、くらいなものだろうけれど、いかんせん見ているイベントが同じなのでどうにも新鮮味に欠けるのだ。

旭山動物園には行ったことがある。
噂のモグモグタイムはどこも長蛇の列で、動物たちの行動をゆっくり観察どころではなかった。
人気のエリアはどこも交通整理のおばちゃんが居て、「立ち止まらないで!」を繰り返している。
話題になって以来、毎年のように新しい展示エリアが新設されて、それを目当てにまた人が集ってくる。
あれ以上お客を増やしてどうしようというのだろう?
3年前、大人580円中学生以下無料市民はタダだった。
今でもその価格を維持しているのだろうか?
そしてそのせいで、今だに赤字続きだったりするのだろうか?

この映画で伝えたいことが具体的にわからない。
渋〜い出演者陣を楽しむだけなら別にそれはそれで構わないのだが、そんなモノだとは思いたくない。
でも、改めて映画化する意図がどうにも見えてこない。

旭山動物園は、プロモーションドラマを作るのをもう止めても良いんじゃないかと思う。
もうそこまで宣伝費を使わなくても黙っていても集客はできているのだから。
ぼちぼち別のどこかを紹介しようよ、監督さん。

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【映】おくりびと

 2009-03-01
滝田洋二郎 監督
★★★★☆

何回かは葬儀に列席したことがある。
少なからず近しい関係の、だった。
が、納棺師という職業の人を見たことはない。
最近は病院で死ぬと病院側がかなりの部分を整えてくれる、という話もあって、いわゆる「納棺師」という職業自体が消えて行きつつあるのかもしれない。

何も知らずに納棺師に就職してしまった青年は、“死”に直接触れる故に妻や友人にすら誤解され蔑まれる。
しかし、続けていくにつれ、それが残された人達に対する優しい儀式であるという事に気付き、周囲も変わってくる。
きっと彼は、社長が予言したとおりになっていくのだろう。

近しい人を送るとき、あんな納棺師のお世話になれればと思った。
でもきっと、葬儀屋の下請けたる納棺師は、選ぶこと自体がそもそも難しいにちがいない。
やっぱりお金が全てかな…と、思わず俗っぽくなってしまうのがいささか悲しいが。

あちこち微妙なミスディレクションがあった気がした。
ひょうひょうとした社長が良い。
もっくんの所作は美しすぎる。

これからは「困ったことに」と思いながら、旨いものを食いたい。

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