【映】風が強く吹いている

 2009-11-01
大森寿美男 監督
★★★☆☆

三浦しをん原作の映画化。
故障で陸上を挫折したハイジの画策の元、ほぼド素人の学生8人と不祥事で挫折したカケルの、合計10人で箱根駅伝を目指す…というお話。

随所に原作とは違う脚色があったが、どれも不満にはならない程度で、泣けるシーン、感動シーン、笑わせるシーン、どれも取りそろえ、それなりに上手くまとめたとは思う。

が、どうも詰めが甘い。

原作では、ほぼ1/3以上を費やしてひとりひとりの想いを詳しく描写していたのに、映画ではそれを相当端折っている。あれがあってこそ、ハイジがいかにド素人の彼らをその気にさせまとめ上げていったかが伝わってくるのに、それをきちんと描いてくれなかったのが原作ファンとして最大の不満になってしまった。せめて、単行本の表紙にあるセリフだけでも全員分言わせて欲しかった…という、一緒に観た人の感想に大いに同意。

ラストの展開もいささか強引。現実的に考えて、ラストの結果には無理がありすぎる。全体に物語がファンタジーであるのは確かだけれど、それなりにそれぞれの努力という説得力を作ってきたのだから、ラストももう少し説得力のある設定にして欲しかったかも。

あと、ハイジとカケルの描写多すぎです。ちょっとしつこいって。

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【映】クヒオ大佐

 2009-10-11
吉田大八 監督
★★★☆☆

実在した稀代の結婚詐欺師、クヒオ大佐。1億円を騙し取ったという割には、かなり行き当たりばったりで、周到とは対局の男だったらしい。そんな大胆なんだか情けないんだか判らない男を、堺雅人がいかにもな感じで演じている。

女性というものは、どこかで「騙されたい」という感情を持っているのだろうか?

少なくとも堺雅人演じるクヒオは、どうにもいかがわしくて、彼女たちがどうして信じてしまうのか判らない。そして、彼女が呟くように、なぜ彼女を…なのかも、もうひとつ判らない。詐欺師なのにどこか憎めない存在として描こうとしているのだろうけれど、どうももう一歩説得力がないのは、その辺りが納得できる描写が無いからなのか、共感できる描かれ方をしていないのか。

クヒオはやたらと相手の感情を読み取っている風の口説き方をするけれど、「騙されたい」女性を嗅ぎわける能力だけは本物だったのかもしれない…と思ってみたりする。

それにしても、堺雅人のあの微妙なアルカイックスマイルは、結婚詐欺師にぴったりで。でも、付けっ鼻のせいで、どうにも別の他人に見えてしまって、途中から集中できなくなってました。
それは…

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【映】私は猫ストーカー

 2009-09-21
鈴木卓爾 監督
★★★☆☆

浅生ハルミンのエッセイを原作とする映画。
常に猫を探し、猫を追いかけ、一定の距離を置きつつ猫と戯れるハルと、彼女がバイトしている古本屋と、そこの看板猫の些細な出来事。

猫は人の心が読めるのかもしれない。飼い猫なんか、特に。
チビトムはきっと、自分がどうするべきか、判ってたんだと思う。

事件らしい事件も起こらないありふれた日常の中で、ハルはひたすら猫を追う。
そんな彼女もどこか猫めいて、周囲の“人間的できごと”からちょっと距離を置いているようにも見える。

ストーリーに入るまでが長いし、生活音がなぜか妙に大きいし、バイトの同僚女史のひそひそ声は聞き取れないし、カメラがやたら揺れるし、一瞬素人が撮ったのか?と思ってしまう映像で、普通の映画を観たい人にはちょっとしんどいかも。
でも、どうしてもあくせくしてしまう身としては、あのテンポで生活できたらいいなぁ…とちょっと憧れてしまった。

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【映】カムイ外伝

 2009-09-20
崔洋一監督
★★☆☆☆

ストーリーが判りづらい、アクションがチープ、その人が何がしたかったのか見えない、人物相関がイマイチ把握できない…。
役者は頑張ってるんだけどねぇ。残念。
ちなみに原作はほとんど読んでないに等しいです。

忍者物は仕方がないのかもしれないけれど、ほとんどの動きがワイヤー見え見え。もの凄くCGで誤魔化してるのも見え見え。ときどき背景が書き割りにすら見えるほどの不自然な合成。なまじ「チョコレートファイター」で“生”のアクションなど観てしまったりしてると、「これは、なんちゃら戦隊ですか?」みたいにしか見えない。

原作を読んでないので、どの程度脚色されてるのか判らないのだけれど、それぞれの人物の真意がどうも読めない。そもそも白土作品は、時に敵が味方に、味方が敵に、姿を変えたり謀ったりが多いのだが、それを限られた尺の中で整合性を持たせて映像化するのには、いささか失敗してたのかもしれない。

役者さんはみんな素晴らしかったですよ。アクションも、かなりの身体能力だと思えたし。大物が揃ってるんで個々の演技は光ってるんです。でも、脚本と画像処理が残念なのでそれぞれが個々に光ってるだけ。佐藤浩市の殿様はもったいない感じだし、やたら自己主張してた絵師の人は立場がぜんぜん判らなかったし、ヒロインの元彼なんか捨てキャラだし…。

とりあえず、松ケンを観に行くだけならお勧めです。

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【映】南極料理人

 2009-08-30
沖田修一 監督
★★★☆☆

前回の『サマーウォーズ』に引き続き、またしても見終わった後、ほっこりというか幸せな気持ちになれる映画だった。

南極観測隊の話なのに、極地観測のエピソードはほとんど出てこない。おっさん達は“働いていない時”ばかり映る。

ただ一人、ひたすら働いている人間がいる。料理担当の西村だ。

8人の男達が単身赴任している基地は、寒すぎてペンギンは愚か細菌やウィルスすら生存できない場所。ほぼ全員が全く違う分野のプロフェッショナルで、狭い基地の中で約1年半顔をつきあわせて暮らす。大きな志を持って来ている者もいれば、最初から左遷だとふてている者もいる。娯楽施設があるでなし、家族や恋人との電話すら1分700円以上という環境の中で、唯一の楽しみである“食事”を作るのが西村の仕事なのだ。

最初のシーンから、丁寧な盛りつけに驚く。基地の食事は栄養補給のための食事ではなく、常にディナーなのだと気付かされる。極めて限られた食材を駆使して、できる限り美味しく、気持ちをリセットできるメニューを考え続けるのは並大抵ではないと思える。その食事を、ものも言わずひたすら平らげていく隊員達を、西村は本当に優しい目で見守っている。

彼らはイベントがあればアホみたいにはしゃぎ、ストレスに押しつぶされては“変”になっていく。それを盛り上げ癒すおいしいごはんが、ただただ淡々と提供されていく。それを食べて笑い涙する彼らを見ているだけで、こちらまで癒され幸せが伝染するんだな…と思った。

ツッコミどころもいろいろあって、随所に見られる生野菜は確かに気になった。生卵も気になった(フライには当然使うよね?)。
でも実は一番気になったのは…
清水さんとお話しするのに幾らかかってたんだろう?という件。砂時計をひっくり返すタイミングを見ていると、もしやして… いやいや、仕事中はアカンやろ… とかね。

珍しくパフレット買って読んだらもう一度見たくなりました。
でも途中ちょっと眠くなったので3点。

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【映】サマーウォーズ

 2009-08-09
細田守 監督
★★★★☆

監督にそんなつもりがあったかどうかは判らないけれど、これ、立派な「お馬鹿アニメ」だと思う。

先輩の軽〜い「バイトしない?」という一言に乗せられて冴えない高校生健二が連れて行かれた先が、田舎の旧家のお屋敷。最長老のおばあちゃんの誕生日ということで一族郎党集るそこへ、“先輩の彼氏(つーかフィアンセ)”として参加するのがバイトの内容、というのは着いてから発覚した事実。
で、めっちゃ美しい風景なこの田舎すらこっそり支配しているのが、ネット上の仮想世界、OZ(オズ)。あまりに世界中の人達が利用しているが故に、実はライフラインから軌道上の衛星までこのOZに管理されているも同然なのだ。
その夜、健二の携帯に送られてきた謎の数列。数学好きが禍してうっかりそれを解いてしまった健二。送信した結果…OZに“謎の何か”が目覚めてしまう。そして破壊と混乱が始まる。

先輩の田舎の風景が非常に美しい。美術観るためだけでも大画面で観る価値あり。そして仮想世界とのギャップも良い。全然関係ない世界に見える大家族集る旧家と、テレビゲーム感バリバリなOZ世界が、少しずつ近づいていくのも面白い。ばあちゃんまでアカウント持ってるのかよ!みたいな。

ツッコミどころ満載だし、かな〜り御都合主義だし、おばあちゃんはいきなりだし、おじさん達妙にスケール大きすぎるし、だけど、おばあちゃんの威光なのか旧家の底力なのか、その勢いに違和感はない。

やっぱりお馬鹿アニメだわ。好きです。

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【映】マン・オン・ワイヤー

 2009-08-02
ジェームズ・マーシュ監督
★★★☆☆

今は無きニューヨークのワールドトレードセンターのツインタワーにワイヤーを張って、綱渡りをしてしまった男の、インタビューと再現映像からなるドキュメンタリー映画。

子どもの頃から綱渡りの魅力に取り憑かれている男は、「そこに山があるから登る」ように、「そこに美しくて高くて綱の張れる場所があるから」ワイヤーを張って渡る。
彼はなんと、ツインタワー構想時に、既に渡る計画をたてているのだ。それに巻き込まれる人、協力を要請される人達は色々な国から集ってくる。建設途中から関係者に化けて下見をし、綿密な準備をしていく。現実に渡ったシーンは、再現と止めの写真しかないけれど、確かに美しく素晴らしい。

それぞれ違う言語を話す協力者達(途中でオリた人も)のインタビューは、体験者だけが語れるリアルな言葉だが、建設中のビルで行われる下見や検証風景の空撮が、いつどうやって撮られたものか謎。違法だったはずの記録が、かなり残っているのだろうか?

ドキュメンタリー自体は面白いと言えば面白いのだが、インタビュー部分がのんびりしていていささか退屈な部分も多かった。警備員から隠れて…みたいな部分にあれだけ時間を取るなら、もう少し計画の試行錯誤な部分を詳しく描いて欲しかったかも。

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【映】築城せよ!

 2009-07-23
古波津陽 監督
★★★☆☆

ウワサに違わぬガッツリお馬鹿映画でした。

築城を果たせなかった無念を晴らすべく、うだつの上がらないお役所職員に取り憑いて現代に蘇った“殿”が、三日間の刻限で果たすため段ボールでお城を造る。
設定自体がお馬鹿。対立する町長との因縁がまたお馬鹿。突き抜けちゃってる御都合主義がお馬鹿。馬鹿企画大好きとしては最高の映画でしたよ。

そもそも撮影のため、実際に段ボールでお城を造ってしまうところが凄いじゃないですか。全面的に協力してる愛知工業大学が羨ましくなっちゃうほど、楽しそうで文化祭なノリ。

ストーリーも御都合主義の極みで、“殿”の、有り得ないほどの「現代適応力」のおかげで町民の心がひとつになって行く過程は素晴らしく「良い話し」なんだけど、あまりに「お馬鹿」の方が強すぎて「良い話し」が前面に出ないところが押しつけがましさを半減させていてまた良い。

いろんな意味で、楽しそうで羨ましいと思える作品が観られて嬉しいです。

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【映】ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破

 2009-07-05
庵野秀明 監督
★★★★☆

シリーズ物といえば、大概、作れば作るほどグズグズになるものだが、これほど破壊力が増すものか。 庵野氏恐るべしである。ちなみにTVシリーズと旧版劇場版は全て観ているが、『新シリーズの序』は観ていない(おさらいだと聞いていたので)。

TVシリーズに填りに填ってから14年、その手の物もほとんど観なくなり、いい加減卒業したと思いこんでいたにもかかわらず、しばし立ち上がれないほどの衝撃はなんだったのか。映像は美しさと迫力を増し、展開はスピーディーになり、物語は判りやすくなった。たたみ掛けるような使徒との邂逅は息をつかせない。もしかすると、あの頃ですら、まだ時期が早かったのかもしれない。

TVシリーズとは設定が微妙に違っている。とことんまでに内向し、どこまでも救いの無かった初期シリーズだったが、今回は随所に救いがあるように思える。まだバブルの余韻が残っていたあの頃と違って、救いのない現実が増え、その中ではっきりとした救いが必要になったのだろうか。

アスカはなぜ苗字が変わったのだろう?
何故乗員の女子には全て“波”が付くのだろう?
何かの布石なのか設定を読み切れていないのか。

そして、次回の『Q』って… 第81Q戦争のQ?
久しぶりにコードウェイナー・スミスを再読したくなった。

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【映】チョコレート・ファイター

 2009-06-07
プラッチャヤー・ピンゲーオ 監督
★★★☆☆

ストリート・ファイターならぬチョコレート・ファイター。
障碍を持つ少女が、特殊能力で悪党どもを蹴散らしていくアクション映画。

もちろん物語には、マフィアとヤクザの抗争の中で育った母親と父親の愛とか、少女を支える一途な少年とか、ちゃんとした背景もあるのだけれど、戦闘シーンが始まるとそんなものはどこへやら、ひたすら少女の目を見張るような動きに釘付けにされるままなのだ。

筋立てから舞台装置まで、一面クリア、二面クリア、三面クリア、中ボス!ラスボス!という展開。ステージ毎に設定と立体感と武器が変わって敵がどんどんレベルアップしていくのはまさにTVゲーム。

ワイヤーを一切使っていないというのが信じられないほどの壮絶なアクションにはただただ引き込まれるのだが、何故か無条件にスカッとした、という感覚が薄いのは、少女の持つ悲劇が余りにも大きい故か。
設定や技法に対して、冒険的とか自由とかギリギリとかいろいろと評価はあって、そういう外部知識を持って観ても、監督の真に意図する事が何だったのかという事は判らなかった。物語とアクションシーンに温度差がありすぎた様に思えたのも一因かもしれない。

チョコレート・ファイターなんだから、もうちょっとチョコレートどか食いして欲しかった。
阿部寛は良いところを取りすぎです。君は何もやってないじゃん。
それよかムン君の方がよっぽど格好良かったよ。

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